2006 X'mas***



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小さな羊よ、どこ行くの?
とさつ場に行くんだよ
何をしに行くの?
血を流しに行くんだよ
帰ってくるの?
帰ってこないよ
頭を切り落とされて
しっぽをきりきざまれて
お肉屋さんの車に乗って
もどってくるよ

(『妖精図鑑〜海と草原の精〜』ピエール・デュボア著
 クリスマスの人食い妖精(ボギーメン)より人食い妖精のはやし歌)


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夢を見る。











ちいさいころ、誰に言っても、
父にさえ、信じてもらえない妖精がいた。



大人の前では、猫かぶり。
暖炉の前に、プレゼントを置き、
とってもいい妖精のふりをして、
その篭についた 赤いしみは 明らかに


子供の、それ。





















ねえ、次に その大きな刃物の餌食になるのは、だあれ?














・・・・夢?


夢にしては鮮明すぎるのは、きっと 今夜がクリスマスだから。



何を言っても信じてもらえない。
こんなこと、
いつものことだけれど。


吹き付ける風の音にまぎれて、
今夜は どこか 違和感を 感じる。



次の番は  私?



小さな羊よ、どこ行くの?
とさつ場に行くんだよ
何をしに行くの?
血を流しに行くんだよ
帰ってくるの?
帰ってこないよ
頭を切り落とされて
しっぽをきりきざまれて
お肉屋さんの車に乗って
もどってくるよ












誰にも、助けてもらえない






こわい

こわい

だれか















ねえ、だれか






信じて、ほしいの

















必死の思いで すがりついた

後ろを振り向けば、大きな刃物を構えた赤い妖精がいるようで。





妖精が見えるのは 私だけ。
真剣に話しても、信じてくれる人は ほんのひとにぎり。



頷いてくれる人も、本音を言っちゃ、どうなのか わからない。




でも、
あなたは ちがうような、気がするの




























夢のなか、安心して しがみついていた 胸が 妙に居心地よくて

不覚にもそれが夢ではなかったことに気付くのに 

時間がかかった



「リディア」


聞きなれた声が、 すぐ耳元からつむがれる











なんで、どうして?










「君の方から、すがり付いてきてくれるなんて嬉しいよ。


僕の妖精」






間近にせまる、
灰紫色の瞳。
甘い微笑み。










この状況、さっきよりも、悪くなってるんじゃない?

心はまさに狼に狙われた、羊。



小さな羊よ、どこ行くの?
とさつ場に行くんだよ
何をしに行くの?
血を流しに行くんだよ
帰ってくるの?
帰ってこないよ



この悪党、人食い妖精よりも 性質が悪い。






[2006年X'mas***]


どうしてもどうしても、人食い妖精が描きたかったのです。
エドガーは、うなされるリディアに夜這いをかけていたんじゃないでしょうか(何で疑問系)
うっかり夜這いしたところ、あらまあ、リディアからすがってもらえるなんて、エドガーったら運がいいですね
この人食い妖精はボギーメンですが、サンタさんの格好で、子供達を狙っています。
妖精図鑑によると、大人には何を言っても信じてもらえずボギーメンの本当の目的を知らないのだとか。
フェアリードクターの妻を持ったカールトン教授に限ってそんなことはないとおもいますが、そこは捏造で・・・

今回は 少し、甘さ、ひかえめ???